はじめに
OdooのEmployees機能は、従業員ごとの基本データ、休暇、採用状況、人事書類を一元化します。これにより、マネージャーや人事が個人ごとに散らばったフォルダや別ツールを行き来せず、ひとつのファイルから作業できるようになります。
人に関する業務は全社に影響しますが、残高や契約、採用の現状が曖昧であることが多く、問題が起きて初めて発覚することが少なくありません。
Employeesアプリは、人事イベントを組織図や承認フロー、必要に応じて給与・経費ワークフローと結び付け、経営陣に対してリアルタイムの人員数・稼働状況を可視化します。
人事ビジネスパートナー、オフィスマネージャー、経営陣が組織変更や人員計画を立てる際、ここに示す実践的なパターンを現在の運用と比べて改善点を見つけられます。
EmployeesはOdooのモジュール群の一部です。責任の所在が明確で、繰り返せるワークフローと検索可能な履歴を求めるチームが導入します。散在するメッセージやオフラインの表計算ではなく、意思決定者に必要な“従業員の公式ファイル”を提供します。
この記事は、難易度をLevel 1(簡単)からLevel 10(専門家向け)までランク付けしたTop10ガイドです。各レベルは実際にOdooの画面でどのボタンを押すかを番号付きで示します。
重要なのは自分たちが確実に扱えるレベルから始めることです。格好だけで最上位を選ぶ必要はありません。
まずは「課題」を読み、あなたのチームの現状に合うレベルから手を付けてください。
このガイドで分かること:
- 一般的なシステム構成の中でEmployeesが担う役割
- 現場で最も摩擦が発生しやすいポイントとその原因
- 入門〜上級までの10のユースケース(優先順位付き)
- 自動化や連携が必要になったときにパートナー導入を検討すべき理由
直面する課題
人事がメールで休暇承認を送る。給与は後で知る。現場マネージャーは火曜日の出勤状況を把握できない。信頼はあるが、データはいつも実態より遅れる──そんな経験はありませんか?
人事業務は社員ひとり一人に及ぶにもかかわらず、休暇、採用、契約が別々のツールに散在していると、マネージャーは承認やメンバーの稼働状況を一元で確認できません。
よく当てはまる悩み:
- メールで承認が飛び交い、休暇残日数が争点になる
- 採用の進捗が複数の採用担当者間で見えにくい
- 契約書が中央ファイルに保管されず、従業員の公式記録が整っていない
良い知らせは、大掛かりなリプレイスは必要ないことです。以下のユースケースのうち一つを選び、30日間Odoo Employeesで運用して効果を測定してみてください。
Employeesの活用シーントップ10
Odoo Employeesの代表的な10のユースケースを、Level 1(今すぐできる)からLevel 10(専門家向け)までランクしました。各ケースは「何をつくるか」と「Odooでの操作手順」を示します。
Level 1は日常の小さな勝ち。最終レベルはあえて大きく描き、同じアプリが整った設計とデータでどこまで拡張できるかを示しています。
まずは現状に合うレベルからテスト環境で手順をなぞり、慣れてきたら次のレベルに進みましょう。
1. 従業員レコードを最初に作る Level 1 — Easy
Level 1は最も単純な操作です。人事担当者が従業員フォームを開き、氏名、写真、勤務情報を入力して保存するだけ。契約やスキル、組織図はまだ不要です。
Odooでの実作業例:
- Employeesアプリをインストールし、Employees→Newでヘッダーに氏名を入力します。
- プロフィール写真をアップロードし、Work Informationタブで勤務用メールと電話番号を入力、職種を選びます。
- Private Informationタブに住所、緊急連絡先、生年月日を入れておけば給与や入館証、出張で同じデータが使えます。
- 保存すると内部コードが発行され、従業員カードがEmployeesのカンバンに表示され他アプリから紐付け可能になります。
- チャッターに「入社日:本日」と一言残し、Followを押して将来の変更通知を受け取るように設定します。
得られる効果:誰が勤務しているかを示す公式な情報源ができ、CRMやセールス、ヘルプデスクに重複登録が生まれません。
2. 部門を作り、見やすい組織図を整備する Level 2 — Easy
Level 2では組織構造を定義します。部門とマネージャー情報を設定すると、フラットな名簿が実務で使える組織図に変わります。
Odooでの実作業例:
- Employees→Configuration→Departments→Newで、セールス、開発、サポート、人事、財務、オペレーションなどの部門を作ります。
- 各部門にDepartment Managerを割り当てておけば、休暇・経費・評価の承認がデフォルトでその人に回ります。
- 各従業員の画面を開き、適切な部門と直属の上司を設定すると自動的に組織図が作られます。
- EmployeesのOrg Chartビューで、CEOから最下位まで正しい報告関係が表示されるか確認します。
- 親部門を設定すれば(例:エンジニアリングをオペレーション配下にするなど)2〜3階層の構造も表現できます。
得られる効果:承認が正しい上司にルーティングされ、他のOdooアプリも同じ組織構造を利用できるようになります。
3. 勤務時間、勤務地、週間スケジュールを従業員単位で設定する Level 3 — Easy
Level 3では勤務時間と勤務地を紐づけます。これによりTime Off、Payroll、Timesheets、Planningが同一の基準で稼働し、キャパシティ推定が正確になります。
Odooでの実作業例:
- Employees→Configuration→Working Schedulesで実際のスケジュール(例:フルタイム38時間、パートタイム80%、金曜休み)を作成します。
- 従業員ごとにWork InformationタブでWorking Hours、タイムゾーン、Work Location(オフィス/在宅/その他)を設定します。
- Work PhoneやWork Mobileを追加し、Coachを割り当てて、業務上の相談相手を明確にしておきます。
- SettingsでRemote Workを有効にすれば、従業員はDiscussヘッダーからワンクリックで在宅/出社を報告できます。
- PlanningやTimesheetsで各人に正しい勤務時間が反映されることを確認します。
得られる効果:休暇残高や給与計算、プロジェクトの工数見積りが統一ルールに沿うようになり、朝の「誰が出社する?」議論が減ります。
4. スキルを管理し、従業員ごとの社内履歴書を作る Level 4 — Medium
Level 4は従業員レコードを生きた履歴書に変えます。SkillsやResumeタブを使えば、プロジェクト配置や人材育成を感覚ではなくデータで行えます。
Odooでの実作業例:
- Employees→Configuration→Skill Typesで、言語、技術、営業、コンプライアンスなどのスキル分類を作り、初心者〜エキスパートのレベルを定義します。
- 各従業員のSkillsタブに該当スキルとレベルを入力し、年次レビューで本人に更新させる運用を設けます。
- Resumeタブには過去の職務経験や資格、社内プロジェクトの記録を残しておけば、履歴書情報がOdoo内で一元管理されます。
- Employeesのカンバンから「スペイン語/上級」などフィルター検索すれば、数秒でプロジェクト要員を見つけられます。
- 部門別のSkill Map検索を保存しておくと、次の採用や研修が必要な領域を早期に把握できます。
得られる効果:プロジェクトアサインや研修計画が実データに基づいて行われ、暗黙知に依存した人材運用を減らします。
5. 雇用契約を発行し、署名してOdoo内で保管する Level 5 — Medium
Level 5は契約管理です。従業員ごとのContractsタブに契約種類、期間、賃金、参照情報を記録しておくことで給与・人事・経理の共通の真実ができます。
Odooでの実作業例:
- 従業員画面のContractsスマートボタン→Newで、契約種別(無期、有期、インターン等)、開始日、終了日、賃金を入力します。
- 署名前はDraft、署名後はStatusをRunningにしておけば、給与計算で常に最新の賃金が参照されます。
- Signアプリと連携し、テンプレートを使って契約PDFを直接送付し電子署名を回収します。
- 署名済みのPDFは契約と従業員レコードに自動添付され、チャッターに誰がいつ署名したかの履歴が残ります。
- 終了日の60日前に更新アクティビティを自動化しておけば、契約更新の抜け漏れがなくなります。
得られる効果:契約の全文検索、署名履歴、更新予定が一か所にまとまり、給与は常に最新契約に基づいて計算されます。
6. 従業員ごとの構造化された人事ファイルを作る Level 6 — Medium
Level 6は文書管理です。Documentsアプリで従業員ごとのプライベートフォルダを用意し、身分証、学位、秘密保持契約、契約書のスキャンを安全に管理します。
Odooでの実作業例:
- Documentsをインストールし、Configuration→WorkspacesでHR専用ワークスペースとContracts、IDs、Diplomas、NDAs、Medicalといったサブフォルダを作ります。
- アクセス権を設定します(例:HR Managerはフル、HR OfficerはMedicalは参照のみ、従業員本人は自分のファイルのみ閲覧)。レコードルールで従業員単位の制御をかけます。
- 従業員レコードのDocumentsボタンから個人フォルダにアクセスし、HRが身分証や資格証、署名済みNDA、住所証明などをアップロードします。
- タグ(Active、Expired、To Review)と有効期限を付与しておけば、パスポートや就労許可の失効が自動でアクティビティを起動します。
- Documentsで「60日以内に期限切れ」タグをフィルターすると、今四半期に更新が必要な従業員が一目で分かります。
- hr-docs@yourcompanyのようなメールエイリアスを作り、従業員がスキャンをメールで送ると自動で正しいフォルダに格納する運用も可能です。
得られる効果:監査対応は数分のフィルター作業で済み、散在したドライブや受信箱を探す手間がなくなります。
7. 公開ディレクトリ、従業員ポータル、プレゼンス表示を公開する Level 7 — Hard
Level 7はEmployeesを全社サービスに変えます。社内ディレクトリ、ポータル、オンライン状態表示を整えることで、従業員が自分で情報を参照できるようになります。
Odooでの実作業例:
- 従業員ごとにPublic Informationタブ(勤務用メール、電話、職務記述)を設定し、同僚がHRに問い合わせずとも適切な担当者を見つけられるようにします。
- EmployeesのActionメニューからPortal Accessを付与すると、従業員は自分のプロファイル、契約、休暇残、給与明細を閲覧できます。
- SettingsでPresenceを有効にすれば、アバターに緑の点が付いてオンライン状態を示し、離席時はグレーになります。
- Employees Directoryリンクを社内ナレッジのトップページにピン留めしておけば、新入社員が入社初週に「誰が何をする人か」を素早く理解できます。
- 公開用の組織図を外部サイトに埋め込み、プライバシールールで表示項目を制御すれば、外部パートナーに見せたい連絡先のみを安全に公開できます。
得られる効果:給与明細や休暇残、高頻度で問合せのある情報は従業員自身が確認できるようになり、人事の問い合わせ対応負荷が軽減されます。
8. 採用・入社・退職の一連業務を他モジュールと連携して回す Level 8 — Hard
Level 8ではEmployeesをHR全体の中心に接続します。オンボーディングやオフボーディングのチェックリストをアクティビティと連携させ、紙のリストや付箋を不要にします。
Odooでの実作業例:
- オンボーディング計画をナレッジ記事で作ります(例:PC発注、入館証発行、ITユーザー作成、契約締結、メンター割当、初回評価予定)。
- 新入社員の画面でActivityメニュー→Plan→Onboardingを選ぶと、IT・HR・マネージャーに期限付きでタスクが自動作成されます。
- 採用フローで候補者を「Hired」からEmployeesに移す際に契約情報をコピーし、オンボーディングが自動で開始するように設定できます。
- Time Off、Expenses、Payrollと連携しておけば、新契約は給与サイクルに組み込まれ、休暇残が初期化され、経費区分も自動設定されます。
- 退職時はOffboarding Planを実行:ポータル権限剥奪、書類のアーカイブ、契約終了処理、Helpdesk・CRM・Projectのアクセス削除を順序立てて行います。
- 従業員別に未完了のオンボーディングタスクを保存ビューで監視すれば、HRがマネージャーをメールで追いかける必要がなくなります。
得られる効果:入社初日体験が均質化し、IT部門の突発対応が減り、退職時の残存アカウントが減少します。
9. 複数会社(マルチカンパニー)で人事を回す Level 9 — Hard
Level 9は複数の法的主体や拠点、言語が混在する環境を整えます。厳格なアクセス制御と自動ユーザー発行でコンプライアンスを保ちながら運用負荷を下げます。
Odooでの実作業例:
- Settings→Companiesで法的主体ごとに会社を作り、従業員ごとに所属会社を割り当てておけば、契約や給与、権限が分離されます。
- Employeesへのレコードルールを設定し、HR Officerは自社範囲のみ、HR Directorは全社、従業員は自身とチームだけ見える、という粒度のアクセスコントロールを実装します。
- Studioの自動化機能で、従業員がInternalで作成されたら自動的にOdooユーザーを作り、適切なグループと言語設定を割り当てるフローを作成できます。
- 部門や上司の構造を跨いで同期し、グループHRディレクターが会社を切り替えずに集約レポートを見られるようにします。
- 多言語を有効にしておけば、契約テンプレートやオンボーディング通知を従業員の希望言語で発行できます。
- 「ユーザーなのに従業員が紐づかない」「従業員なのにユーザーがない」を定期的に監査するフィルターを保存し、幽霊アカウントや未割当のライセンスを速やかに発見します。
得られる効果:各国拠点で同一プロセスを回しつつも監査ログやアクセス権が保たれ、不要なゴーストアカウントを防げます。
アクセスルール設計、マルチカンパニーの契約管理、給与マッピング、ユーザー自動発行は、Dasoloがパートナーとして設計・実装する典型的な業務領域です。
10. ダッシュボード、IoT、ライフサイクル自動化を備えたAI人事基盤を作る Level 10 — Expert
Level 10は完全な人事運用基盤です。ナレッジを学習するAIアシスタント、IoTバッジでの出入り管理、スキルとライフサイクルのダッシュボード、自動化が面倒な作業を代替します。
Odooでの実作業例:
- Knowledgeベース(規程、契約、FAQ、福利厚生)を学習させたAIアシスタントを用意すれば、従業員は自分で質問に答えを得られるようになります。
- IoTバッジやWi‑Fiアクセスポイントを連携して出退勤や滞在場所、物理的アクセスログを従業員レコードに取り込みます。
- HR用のスプレッドシート風KPIダッシュボードを作り、部門別人員数、スキルカバレッジ、契約満了、未完のオンボーディング、生産性立ち上がり期間、離職率などを可視化します。
- Studioの自動化でライフサイクルイベントを回します:試用評価は入社60日目、更新リマインドは300日目、年次スキル更新、退職時の面談スケジュールなど。
- 出退勤や休暇のデータにAIで異常検知をかけ、燃え尽き兆候や遅刻の常習、書類の失効が業務に影響する前にアラートします。
- Recruitment、Time Off、Payroll、Expenses、Helpdesk、Projectを完全連携させれば、人事の変更は再入力なしで各システムに伝播し、チャッターで統一された監査トレイルが残ります。
得られる効果:人事が戦略的業務に専念できるようになり、意思決定はライブデータに基づき、従業員は迅速に自己解決できます。
AIアシスタントの設計、IoTバッジ接続、ダッシュボード作成、クロスアプリの自動化はDasoloがパートナーとして組み上げる専門領域です。これにより試行錯誤の長期化を避けられます。
専門家の支援が有効な場面
Level 1〜6の範囲なら、標準的なOdoo Employeesと社内のオーナー、試せるサンドボックス環境があれば十分に実装できます。
Level 7以上になるとリスクが増えます:誤送信する自動メール、アップグレードを阻害するStudioカスタム、深夜に同期が止まるAPIなど、運用上の致命的な障害が起きやすくなります。
これはチームの失敗ではなく、アーキテクチャ、試験、ガバナンスが重要になるサインです。
複数アプリ設計、国別コンプライアンス、複雑な連携、取締役会が決めたローンチ日に間に合わせる必要がある場合はパートナーを入れてください。
Dasoloと一緒に進めるには
Dasoloは、実際の業務に沿ったOdoo導入を支援します。カスタムアプリ、堅牢な連携、定着するトレーニングを提供し、コンサルタントが離れた後も運用が回るようにします。
Employeesの高度なユースケースを計画しているなら、短期で実現できる施策から自動化・連携フェーズへ段階的に設計するロードマップを一緒に作れます。
お客様はスコープと予算のコントロールを維持し、我々はOdooの専門知識で運用段階での高コストな学びを避けます。
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